はじめてのイラスト・漫画制作 ― 全部を同時に学ぼうとする前に

要旨
イラストや漫画をこれから始める方には、すべてを同時に学ぶのではなく、順番を決め、時期を分けて身につけることをおすすめします。まずは 1〜2 年、絵と物語づくりに集中し、作品世界がある程度固まってから、音楽や技術を少しずつ取り入れる方法です。技術は必要になったときに学ぶほうが、驚くほど早く身につきます。希望王女サンタリアの物語づくりを通じて、創作についてのご相談をいただく機会が増えており、本記事はそのなかでも特に多いご相談にお答えするものです。
経緯
創作を始めたばかりの頃は、素敵な絵、心をつかむ物語、耳に残る音楽、美しく整えられた Web サイトなど、目に入るものすべてが魅力的に見えます。次のような思いが生まれるのは、自然なことです。これらのスキルはすべて表現することでつながっており、いつか役に立つ日が来るのも本当のことで、決して無駄にはなりません。
- イラストも上手くなりたい
- 漫画も描けるようになりたい
- 作曲もできたら素敵
- Web サイトも作りたい
- プログラミングも覚えたい
しかし、これらを初心者の段階から並行して身につけようとすると、一つずつの技術が薄くなりがちです。時間は誰にとっても限られています。絵に使うはずだった時間が、いつのまにか設定やツールの調整、環境づくりへ流れてしまいます。気づけば数か月が経ち、手元に残った作品は思ったより少ないという話を、これまで何度も伺ってきました。
IT 技術や Web 制作は、必要になれば後からでも習得できます。時間はかかりますが、何のために使うのかがはっきりしている分、学ぶ効率も上がり、目的のある学びは驚くほど身体になじみます。逆に、表現がまだ固まっていない段階で手を広げすぎると、どれも中途半端になり、最も大切なご自身の作品を作り込む時間が失われます。作品がなければ、技術を活かす場所もありません。順番があるのは、そのためです。
補足
迷っている方は、この一年で何を残したいかを問いとして立ててみてください。一枚の絵かもしれませんし、十六ページの短い漫画かもしれません。数を決めなくても構いませんが、方向を一つに絞るだけで、日々の選択がずいぶん楽になります。手を広げないことは可能性を狭めることではなく、いま伸ばしたい一本の枝に光を集めることです。
他の分野への興味を、無理に消す必要はありません。音楽を聴くこと、良い Web サイトを眺めること、写真を撮ることは、直接手を動かさなくても、内側に静かに蓄えられていきます。おすすめは、いまは触れるだけと決め、学びたいことをノートに書き留めておき、絵と物語がある程度かたちになったときにそのノートを開くことです。そのときに学びはじめれば、必要性がはっきりしている分、吸収は格段に速くなります。当サイトの学習講座でも、この順番を前提に内容を整えていく予定です。
創作は、誰かと競うためのものではありません。上達の速さも進む道筋も、人によって違っていて当たり前です。周りの作品を見て焦る日には、最初に描きたいと思った気持ちに戻ってみてください。一枚ずつ描く積み重ねが、その方にしか描けない世界をかたちづくり、技術はその世界を届けるための道具として、必要になったときに迎えにいけばよいのです。創作の時間が穏やかで実りあるものになるよう、願っております。
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